i
シネマカルチャーCinemaCulture NEWS







■NEWS!
映画業界が発火点となり、世界中に一気に広まった「#Me Too」運動。 そんな2018年を公開映画でふり返ってみました…そして2019年は?

■昨年、ハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインが複数の女優からセクシャル・ハラスメントで告発されて映画業界を追われた。
ワインスタインと言えば単に大物というだけでなく数々の名作を送り出してきたつわものだけに業界に激震が走ったが、たとえ名プロデューサーでもかばいきれない迫力が今回の告発にはあった。その一方で、ハリウッド業界内のある種リベラルさや健全さが示された出来事だったようにも思われる。今年のゴールデングローブ賞では告発に賛同する形で女優たちは黒の装いで出席し、続くアカデミー賞でも出席者たちが次々と賛意を表明。さらに5月のカンヌ映画祭でもケイト・ブランシェット審査員長ら女性陣が同じような意思表明をし、告発運動は「Me Too」という合言葉とともに瞬く間に世界中に波及していった。
2018年のまとめに代えてここでは、告発に端を発した女性解放の流れのなかで今年の公開映画をふり返ってみた。
                                                  (2018年12月30日 Text by NorikoYamashita)

■■■■■■『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』■『オーシャンズ8』■『メアリーの総て』■『アイ・フィール・プリティ!人生最高のハプニング』■■■■■■
●夏に公開された『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』はまさに今年のこの空気にふさわしい映画だったのではないだろうか。舞台は1970年代、いまの「Me Too運動」以上に盛り上がりを見せた女性解放運動「ウイメンズ・リブ」の時代。その闘士でもあったプロテニス・プレイヤーのビリー・ジーン・キングが、男子の元プロテニス・プレイヤーに試合を挑まれ受けて立つという実話をもとに描いた物語だった。なぜ試合を挑まれたのか。裏事情もあったのだが、優勝賞金など大きな格差があったテニス界での男女平等を訴え続けたキングへの嫌がらせと受け取られても仕方がない。けれど“セクシーズ=男女”の闘いを、夫婦監督のヴァレリー・ファリスとジョナサン・デイトンはやんわりとユーモアも交えて描き、娯楽映画に仕立てたところがよかった。

●やはり夏にはハリウッド映画の『オーシャンズ8』が公開された。ジョージ・クルーニーやブラッド・ピットらで大ヒットした『オーシャンズ』シリーズの最新版で、サンドラ・ブロックやケイト・ブランシェット、アン・ハサウェイなど、オーシャンズのメンバーや主要人物のすべてを女性で占めて注目された。

●古典のなかにも材料はいっぱいある。12月に公開された『メアリーの総て』はゴシック小説「フランケンシュタイン」を書いた女性作家メアリー・シェリーに焦点を当てたお話。もしかして、フランケンシュタインの生みの親はまだ男性と思っている人がいまもいるのでは。彼女が生きた18~19世紀のイギリスは女性作家が活躍したことでも知られているが、とはいえすんなりと認められ本が出せるという時代ではなかった。その葛藤と奮闘ぶりをエル・ファニングが瑞々しく演じている。サウジアラビア生まれの女性監督ハイファ・アル=マンスールが手がけた作品。

●12月28日に公開されたばかり、今年を締めくくるのが?エイミー・シューマー主演のコメディ『アイ・フィール・プリティ!人生最高のハプニング』。エイミーと言えばあまりにも「お下品」なので、引いてしまう人もいるかもしれない。 前作『エイミー・エイミー!こじらせシングルライフの抜け出し方』同様今回も×××。でもよーく見ると、彼女はたぶん闘う女なのだということがわかってくる。本作でエイミーは、自分が美女に変身したと思い込む小太りの女性役(そのまま)。勘違いし始めた途端、会社の花形セクションに異動になるわ、ボーイフレンドはできるわと大変なことになってゆく。アビー・コーンとマーク・シルバースタインの男女コンビが脚本と監督を手がけている。
2018年12月28日(金)公開の『アイ・フィール・プリティ!人生最高のハプニング』でも絶好調のエイミー・シューマー(写真右)。
10月にはセクハラで告発されていたブレット・カバノーを米大統領トランプが最高裁判事に指名したことから抗議デモに参加。拘留されたというニュースも伝わった。

『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』 『オーシャンズ8』 『メアリーの総て』

新しい年2019年もまだまだ続く……
■■『蜘蛛の巣を払う女』■『バハールの涙』■『天才作家の妻ー40年目の真実―』■『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』■『ビリーブ 未来への大逆転』■■

●この流れ、新たな年2019年もまだまだ続きそうだ。まずは「ミレニアム」シリーズあるいは「ドラゴン・タトゥーの女」として知られるシリーズの最新作『蜘蛛の巣を払う女』が1月11日に公開される。このシリーズ、原作が生まれたスウェーデンで3作、ハリウッドで1作つくられているが、新作はハリウッド版の第2弾。主人公リスベット役は前作のルーニー・マーラから売出し中のクレア・フォイ(デイミアン・チャゼル監督の『ファースト・マン』も控える)に代わっている。オープニングからセクハラ男を痛めつけるシーンですぞ!

●1月19日(土)公開の『バハールの涙』はイラクのクルド地区でISに拉致され性奴隷となった女性が脱出し戦闘員として戦ってゆく悲惨な話。今年のノーベル賞受賞者ナディア・ムラドさんの経験にも通じる。女性監督のエヴァ・ウッソン作品。

●1月にもう1本。26日(土)に公開される『天才作家の妻―40年目の真実―』は、ノーベル文学賞を受賞することになる大御所作家とその妻のある秘密を描いている。科学者同士の結婚というのはよくあるらしく、文学者だってそういう例はあるだろう。果たしてこの夫婦はどういう秘密を抱えているのか。

●3月22日(金)に公開が決まった『ビリーブ 未来への大逆転』は85歳にして現役米最高裁判事として活躍するルース・ギンズバーグの実話物語。1970年代に起こした「男女平等裁判」、その顛末が描かれる。主人公役は『博士と彼女のセオリー』のフェリシティ・ジョーンズ。『ディープ・インパクト』の女性監督ミミ・レダーがメガホンをとった。

●同じく3月に公開の『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』は16世紀の英国を舞台に歴史上の人物、メアリー・スチュワートとエリザベスⅠ世を描いた史劇。構図としてはメアリーVSエリザベスだが、女性監督のジョージ・ルークはむしろ男性社会のなかで女王ふたりがどう生きたかに焦点を当てている。見どころのひとつはシアーシャ・ローナンとマーゴット・ロビーの女優対決、だがふたりを対立させるようなステレオタイプな描き方はせずイマジネーション豊かに物語を構築している。


2019年1月11日(金)公開『蜘蛛の巣を払う女』 2019年1月19日(土)公開『バハールの涙』
2019年1月26日(金)公開『天才作家の妻ー40年目の真実―』  2019年3月公開『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』
■バトル・オブ・ザ・セクシーズ©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation ■オーシャンズ8©2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ■メアリーの総て©Parallel Films (Storm) Limited / Juliette Films SA / Parallel (Storm) Limited / The British Film Institute 2017 ■アイ・フィール・プリティ!人生最高のハプニング©2018 STX Financing, LLC. All Rights Reserved. © MMXVIII Voltage Pictures, LLC. All rights Reserved. ■蜘蛛の巣を払う女
■バハールの涙©2018 - Maneki Films - Wild Bunch - Arches Films - Gapbusters - 20 Steps Productions - RTBF(Television belge)
■天才作家の妻ー40年目の真実―©META FILM LONDON LIMITED 2017
■ふたりの女王 メアリーとエリザベス©2018 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED.■ビリーブ 未来への大逆転©2018 STORYTELLER DISTRIBUTION CO.,LLC.
2019年3月22日(金)公開『ビリーブ 未来への大逆転』.
   



  映画ファンのための映画サイト
   シネマカルチャーdigital

Powerd by Contrescarpe(1998-2006 Cinema-joho.com/2017- CinemaCulture)
Copyright(c)Contrescarpe/CinemaCulture.All rights
reserved.
問合せ:info@cinemaculture.tokyo